埋込消耗品の豆知識
埋込は切断した試料を樹脂に埋込む工程です。ここで大切なことは樹脂と試料が隙間なく密着した状態で、試料研磨面が水平に埋込まれている事です。隙間があると研磨工程で研磨砥粒などが入り込み次の番手の研磨で大きな傷を作る原因となったり、ダレ(試料と樹脂に段差が出来る)の原因となります。試料研磨面が水平でない場合は、面出しに多くの時間を費やさなければならず観察したい箇所が見えないといった事が起きてしまいます。試料研磨面に切断時のバリや段差がある場合、薄くて倒れやすい試料を埋込む場合に起きやすいトラブルです。研磨でこのような原因に悩まされている方は埋込作業を見直す必要があるかもしれません。
熱間埋込樹脂
ECOPRESSシリーズで試料を埋込む際に使用します。粉末の樹脂を試料と共にモールドと呼ばれる型に入れ熱と圧力を掛けてプレス成型のように埋込試料を作成します。
樹脂の種類
弊社では熱硬化性のフェノール、エポキシ、ジアリルフタレートと熱可塑性のアクリルをご用意しております。熱硬化性は加熱すると軟化し固まる樹脂、熱可塑性は加熱すると軟化し冷却すると固まる樹脂というイメージです。極端に言うと熱硬化性は冷却無しでも埋込みは完了していますが、熱可塑性は冷却時に固まるので冷却がポイントとなります。
樹脂を選定する際は出来るだけ埋込む試料の硬度に合わせる事が大切です。アルミ、銅、一般鋼材等はアクリル、フェノールを、焼入鋼、超鋼材等の硬度の高い試料はエポキシ、ジアリルフタレートをお勧めします。
この他に電解研磨、電子顕微鏡で使用する導電性樹脂として、銅粉入りのアクリル樹脂とカーボン入りのフェノールが御座います。
樹脂を選定する際は出来るだけ埋込む試料の硬度に合わせる事が大切です。アルミ、銅、一般鋼材等はアクリル、フェノールを、焼入鋼、超鋼材等の硬度の高い試料はエポキシ、ジアリルフタレートをお勧めします。
この他に電解研磨、電子顕微鏡で使用する導電性樹脂として、銅粉入りのアクリル樹脂とカーボン入りのフェノールが御座います。
樹脂 | 特徴 | ![]() |
---|---|---|
アクリル | 透明樹脂なので横から試料を確認出来ます。 | |
フェノール | 最も安価な樹脂で、粉末、顆粒、色付と豊富な種類が御座います。 | |
エポキシ | フェノールよりも硬度が高く密着性が高い樹脂です。 | |
ジアリルフタレート | エポキシよりも硬度が若干高くダレが出難い樹脂です。 |
保管方法
高温多湿を避け直射日光の当たらない24時間空調が入った部屋で保管して下さい。樹脂は水分を吸い劣化していきますので特に湿度には気を付けてください。必ず密封容器に入れ使い終わったら蓋をするようにして下さい。樹脂の購入当初は上手く埋込が出来ていたが使用していくうちに段々と埋込不良が出るようになったという場合は、樹脂が水分を吸って加熱しても溶け難くなっています。硬化しても研磨中に欠けが出たり、硬度不足になっている可能性があります。
トラブルシューティング
トラブル内容 | 原因 | 処置 |
---|---|---|
上部に膨らみがある、 上部に変色が見られる |
・樹脂が完全に溶けていない | ・加熱温度を高くする ・圧力を高くする ・ホールド時間を長くする ・樹脂が劣化している |
樹脂と試料の間に隙間が空く | ・樹脂が完全に溶けていない | ・加熱温度を高くする ・圧力を高くする ・ホールド時間を長くする |
・切断時の油やゴミ等が付着している | ・超音波洗浄等を用いてし試料を清掃する | |
亀裂が入る | ・試料が大きすぎる | ・試料を小さくする ・樹脂が劣化している |
試料がラム(加圧面)に張付く | ・完全に冷えてない | ・冷却温度を低くする ・冷却時間を長くする |
コットンボールが出来る(アクリル) | ・樹脂が完全に溶けていない | ・加熱温度を高くする ・圧力を高くする ・ホールド時間を長くする ・急冷を避ける ・樹脂が劣化している |
常温硬化樹脂
圧力や高温の下に耐えられない試料や、大量の試料を埋込場合は常温硬化樹脂を使用します。主剤と硬化剤を混ぜ合わせて埋込試料を作成します。
樹脂の種類
弊社ではエポキシ、ポリエステル樹脂をご用意しております。エポキシは硬度が高く透明度の高い埋込が出来ますが硬化時間は長くなってしまいます。ポリエステルは硬度、透明度はエポキシに若干劣りますが、安価で硬化時間が早く大量に埋込試料を作成する場合に向いています。
ポリエステル樹脂については平成26年11月1日より『特定化学物質障害予防規則』が改正されポリエステルに含有される「スチレン」が健康障害を及ぼす恐れがあるとして特定化学物質に指定されました。これを受け弊社では、スチレンを含まないポリエステル樹脂の開発に取り組み、業界で初めてスチレンフリーポリエステル樹脂「アクア」を完成させました。ポリエステル樹脂を多くお使いの方は是非一度サンプルをお試しください。
ポリエステル樹脂については平成26年11月1日より『特定化学物質障害予防規則』が改正されポリエステルに含有される「スチレン」が健康障害を及ぼす恐れがあるとして特定化学物質に指定されました。これを受け弊社では、スチレンを含まないポリエステル樹脂の開発に取り組み、業界で初めてスチレンフリーポリエステル樹脂「アクア」を完成させました。ポリエステル樹脂を多くお使いの方は是非一度サンプルをお試しください。
樹脂 | 特徴 |
---|---|
エポキシ | 硬度、透明度が高く収縮率も低いが硬化時間は長い。硬化時間が短いものもあるが高価。 |
ポリエステル | 硬度、透明度、収縮率でエポキシに劣るが硬化時間が短く安価。スチレン含有とスチレンフリーがある。 |
この他にドイツのクルツァー社の「テクノビット」をご用意しております。埋込をされたことがある方なら一度は耳にしたことがある商品かと思いますが、常温硬化樹脂でありながら硬化時間が圧倒的に短く、多様な種類がある高性能な樹脂です。短所といえば高価であるという点ですが、弊社では可能な限り無駄なコストを省き「高価なテクノビット」を少しでも安く販売出来るよう努めています。消耗品カタログで価格をご確認ください。
保管方法
高温多湿を避け直射日光の当たらない24時間空調が入った部屋で暗い場所で保管して下さい。使用後は必ず容器のキャップをしっかり閉めて下さい。常温硬化樹脂は長期保存が難しいので数か月で使用出来る量を購入するようにし買い溜めはしないようにして下さい。
トラブルシューティング
トラブル内容 | 原因 | 処置 |
---|---|---|
硬度が足りない | ・主剤と硬化剤が適正に混合されていない ・樹脂の劣化 |
・混合比を正確に測る ・攪拌が十分でない ・樹脂を新しいものと変えてみる |
気泡が入る | ・樹脂の攪拌時、投入時に空気が入る ・試料が汚れている |
・ゆっくり攪拌する ・脱泡含侵器を使用する ・試料を超音波洗浄する |
隙間が空く | ・主剤と硬化剤が適正に混合されていない ・試料が汚れている |
・混合比を正確に測る ・攪拌が十分でない ・脱泡含侵器を使用する ・試料を超音波洗浄する ・樹脂を収縮率の低いものに変える |
亀裂が入る | ・樹脂の異常硬化 | ・混合比を正確に測る ・攪拌が十分でない |
透明度が落ちる | ・主剤と硬化剤が適正に混合されていない ・樹脂の劣化 |
・混合比を正確に測る ・攪拌が十分でない ・樹脂を新しいものと変えてみる |